6月4日(日)~10日(土)は歯と口の健康週間です!
今年の標語は、『 「おいしい」と「元気」を支える丈夫な歯 』です
と日本歯科医師会のホームページに記載されております。
皆さん、「歯と口の健康週間」のことをご存じでしょうか。
これは、厚生労働省、文部科学省、日本歯科医師会が1958年(昭和33年)から実施している週間で、もともとは1928年(昭和3年)に日本歯科医師会が、「6(む)4(し)」にちなんで6月4日に「虫歯予防デー」をスタートさせ、それが現在の「歯と口の健康週間」へ続いているものです。
さて、冒頭の標語の「元気を支える」の部分について、歯が健康であれば元気なのは当たり前と皆さん直観的に納得されると思いますが、それを科学的に裏付ける研究データがたくさん報告されていますので、その中の一つをご紹介致します。
日本大学歯学部の落合邦康特任教授(口腔細菌学)らの研究チームが、歯周病菌が作り出す「酪酸」がアルツハイマー病を引き起こす一因になる可能性があるという研究結果を5月12日の日本歯周病学会で報告しました。
落合教授は、口腔内や腸内細菌と全身疾患の関連についての研究が専門で、2016年11月30日のNHKのTV番組「ガッテン!」をはじめ他の番組にも出演され、口内フローラ(口腔内の細菌群)健康について解説されています。
歯周病患者の歯と歯肉の隙間の歯周ポケットからは健常者からの10倍以上の酪酸が検出され、その酪酸が血流に乗って脳内細胞に取り込まれ脳細胞にダメージを与える酸化ストレス物質(ヘム、過酸化水素、遊離脂肪酸)を生成することで脳細胞が傷つくことをチームはすでに報告していますが、今回の研究では、健康なラットの歯肉に酪酸を注射し6時間後に海馬や松果体、下垂体、大脳、小脳の酸化ストレスの状態などを分析したそうです。
酪酸を注射したラットは、通常のラットに比べ、全ての脳の部位で平均35~83%も酸化ストレス物質の濃度が上昇しており、中でも海馬での上昇率が最も高く、アルツハイマー病の患者の脳神経細胞内で異常蓄積するたんぱく質「タウ」の量が平均42%も増加していたそうです。
また、細胞の自殺を誘導する酵素「カスパーゼ」の活性も海馬で平均87%増加していたとのことでした。
今後は歯肉から脳内にどれだけ酪酸が入り込むのか、酪酸を注射した動物がアルツハイマー病を発症するかどうかを検証する予定とのことです。
アルツハイマー病の発生機序が完全に解明されているわけではないので、今後更なる研究報告が待たれますが、糖尿病、早産、骨粗鬆症、動脈硬化症、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞、誤嚥性肺炎など様々な全身疾患と歯周病の関連についてもすでにたくさんの報告がされており、日本人成人の80%以上が罹患していると言われている歯周病対策を怠らないことが、健康への近道であることは確かだと言えるでしょう。
自分はちゃんと歯磨きしているから歯周病なんて関係ないと考えておられる方も、毎年6月にはご自分の歯や歯茎をじっくり見て頂き、歯科医院の定期健診の予約をとってもらえると嬉しく思います。
歯科医師 富永克子